星現る

電車の空席に座り普段通りテキトーに視線を下へ落としつつ眠りの国に誘われたその刹那、空から他人の鞄が落ちてきて頭にクリーンヒット。


今度ばかりは星が見えたぜ。


あまりに突然の出来事だったので、ひたすら謝っていたオッサンが何を喋っていたのかすぐには判別できなかった。
ここで怒りちらすのも何なのでヘタレらしく平静を装ってみた。


本当は泣きたかったが。



顔がイカツければイチャモンつけて長期間医療費ぶんどれたのにな☆
僕ってつくづくイイ人だなと思っちゃう。自画自賛。いや自惚れか。それもまた良し。


さて先日書いたとおり今日は本の返却日だ。
紙みたいに薄っぺらい鞄も今日だけは様子が違っていたらしい。
普段なら肩から掛けるタイプのヤツで中身も筆記用具とノート、教材諸々しか入っていないから楽々なのに、今日は他の学生達が歩く最中僕だけが両手で大事そうに鞄を抱えていたのでいかにも怪しげであった。
どうして大事に抱えていたのかというとあまりに重くて底が抜けそうだからだ。



軽く想像して頂きたい。
学生達がぞろぞろと歩く公道のド真ん中。前を歩くヘンな学生の鞄が不意に暴発し中のモノが道に飛び散るものなら周りに居る者の多くは99%の野次馬根性1%の同情心でその状況を短時間で効率良く記憶へ留めようと心がけるだろう。
ただこれを一人称で捉えた時それだけは断固阻止したいと願うだろうし、少なくとも僕に限ってはそうだろう。そもそも僕が公開許可していないネタを勝手に第三者トークの話題として使われてしまったとしたら、何の為に僕は恥を承知で身を粉にして体を張ったのかが分からなくなってしまう。そうなった場合は一人前に著作権法を唱えてみようとは思うが、その前に情けない記録をこれ見よがしに申請しに行かないといけないという件については真に不本意だ。
そもそも自分の恥を権利として主張する事はつまり恥の上塗り且つ馬鹿極まりないというヤツではないのか。


そんな事を考えつつ図書館に無事着いたのは良いのが、杜撰な本の保管状況にも関わらずしっかりコンピュータでそれの返却処理が終了するまで帰らせてくれないのが本当に憎い。


1秒の差は大きい。